CONCEPT
代替ではなく、発見を。
酔うためではなく、味わうために。
STORY
乾杯の輪から、そっと外れる人がいた
はじまりは、ひとつの光景でした。
祝いの席で、グラスが重なる瞬間。手元のグラスを、ほんの少しだけずらす人がいる。妊娠中の友人、体調を気遣う年配の親族、翌朝の運転を控えたビジネスパートナー。理由はそれぞれ違います。けれどその一瞬だけ、彼らは輪から静かに外れているように見えました。
お酒を飲まないと決めただけで、その場を心から愉しみきれない。その小さな引っかかりをなくしたい——それが、このプロジェクトの出発点でした。
乾杯という行為は、
本来もっと開かれているべきではないか。
BACKGROUND
「今日は飲まないので」と言える時代に
会食の風景は、この数年で確かに変わりました。以前は「とりあえずビールで」と一斉に注文するのが普通でしたが、いまは最初の一杯からばらけます。ビール、ウーロン茶、ノンアルコールビール。乾杯の卓に、違うものが並ぶ。
言い方も変わりました。かつては「すみません、飲めないんです」と少し詫びるように断る人が多かった。いまは「今日は飲まないので」で済みます。勧める側も、それ以上は聞かない。
あえて飲まないことを前向きに選ぶ——ソバーキュリアスと呼ばれるこの態度は、もう特別なものではありません。20代では男性の約半数、女性の約6割が、日頃アルコールから離れた生活を送っているという分析もあります(ニッセイ基礎研究所調べ)。
飲む人と飲まない人が分かれたのではなく、同じ席にいる一人ひとりが、その日ごとに選ぶようになった。だとすれば、問われるのは——飲まないほうを選んだ人の前に、何が置かれているのか。
飲まないお客様に、何を提供するか
この変化を最も切実に受け止めているのは、飲まないお客様と日々向き合っているプロの方々です。
手をかけた料理を出しているのに、アルコールを飲まないお客様のグラスにだけ市販のジュースが注がれる。その落差を、見過ごせなくなってきた。何を出すかという問いが、店の姿勢を映すようになったということでもあります。
ところが、選べる商品が足りていません。国内のノンアルコールジン市場はまだ小さく、本物のジンが持つ複雑さや厚みまで備えたものは多くない。料理と正面から釣り合う一本を探そうとすると、選択肢は途端に狭くなります。
Non Alcoholic Gin Wonder が向かったのは、この空白でした。
PHILOSOPHY
似せることを、やめた
開発にあたって最初に決めたのは、つくるものではなく、つくらないものでした。
市場にあるノンアルコール飲料の多くは、ビールを飲めない場面のためのビール風、ワインを飲めない場面のためのワイン風として設計されています。似せることが目的である限り、その一本は本物の影から抜け出せない。
だから私たちは、アルコールを抜いた飲み物ではなく、最初からこの姿で設計された、完成した飲み物をつくることにしました。
伝統的なジンが磨いてきた素材の力は借ります。けれど目指すのは、ジンの再現ではありません。歴史のなかで選び抜かれてきたボタニカルの力を借りながら、それ自体として選ばれる一本を組み立てる。
私たちはこれを「代替ではなく、発見」と呼んでいます。飲めないから仕方なく手に取るのではなく、飲まない夜だからこそ話題にしたくなる。狙いは、そこにあります。
「ノンアルコールにしては、おいしい」
という枕詞を、必要としないこと。
「ノンアルコールにしては」を、いらなくする
開発の全期間を通じて、たったひとつの基準を置き続けました。
淡く、水っぽくなりがちなこの領域で、しっかりとした骨格を持たせられるか。アルコールのキックがない分、香り・苦み・余韻の設計だけで飲みごたえをつくれるか。試作のたびに問い直したのは、その一点でした。
MAKER
小さな巨人たちと共に
この発想は、私たちの成り立ちとも重なっています。
株式会社スモールジャイアンツスタジオは、「日本からひとつでも多くの"小さな巨人"を生み出す」をミッションに掲げる会社です。全国各地の中小酒造やものづくり企業、一次産業の事業者が持つ技術と情熱を掘り起こし、共に価値を高めてきました。コンサルティング会社でも広告代理店でもなく、伴走者として、パートナーとして。
プレミアムアルコールブランド「CRAFT WONDER」では、ミズナラ樽熟成のビール、氷結製法によるビール、泡盛古酒とウイスキーを掛け合わせたライスウイスキーなど、独自の発想で酒類の常識を更新してきました。ICCサミット FUKUOKA 2025「SAKE AWARD」総合4位、都内五つ星ホテルへの導入、伊勢丹新宿店でのポップアップ、BRUTUS や LEON への掲載。
Non Alcoholic Gin Wonder は、その延長線上にある次の一手です。日本のつくり手が積み上げてきた技術は、必ずその水準に届く。私たちはそう確信しています。
VISION
つくりたい風景
飲まない人のために「何か」を用意することではありません。飲む人と同じ密度の一杯を、同じテーブルに並べること。
乾杯の輪から、誰も外れなくていい状態をつくること。
私たちが目指しているのは、そういう風景の変化です。